正倉院裂にある葡萄唐草文様をモチーフとしたデザインです。葡萄の果実、葉、蔓巻などを円転する蔓に配して巧みにまとめ上げた文様となっています。ペルシアなどの西方が原産で古くからヨーロッパなど世界各地に伝わり、豊穣の象徴として文様化されたそうです。中国では古鏡の裏の装飾や仏教美術に用いられた後、飛鳥時代の日本に伝えられました。葡萄だけ描かれれば秋の文様なのですが、唐草と混ぜ合わせることで正倉院に由来する古典文様として季節を問わない文様になります。 「美しいキモノ」2012年冬号で女優・紺野美沙子さんがご着用されました。
宝尽くしと松竹の柄が入った扇・団扇(だんせん)と松、竹を組み合わせたデザインです。如意宝珠、隠れ笠、打ち出の小槌などの福徳をよぶ代表的な吉祥文様である宝尽くしに、冬の寒さに耐える松、緑を保つ竹などさらに祝儀の文様を加えたおめでたい扇と団扇となっています。扇は末が広がることから末広とも呼ばれ、こちらも縁起の良い文様です。団扇は一般的な風をあおぐ「うちわ」に似ていますが異なるもので、奈良時代は権力者の儀礼用に使われていました。 女優・栗山千明さんが「美しいキモノ」2019年秋号でご着用されています。
変形させた七宝文様と松の花をモチーフにした華文を組み合わせたデザインです。七宝とは有職文様の代表的なひとつで、同じ円を円周の四分の一ずつ重ねていく文様です。元来は仏教で貴重な七つの宝(金、銀、瑠璃、玻璃、珊瑚、瑪瑙、真珠)を意味しましたが、和の連なりを人と人とのご縁が広がる様に例え「人のご縁は七つの宝よりも尊い」という意味合いを込めたこの文様の名前としての方が今では一般的となっています。 松は常緑樹で色の変わらない普遍性が尊ばれ、千年の樹齢を保つと言われることから長生きの象徴として吉祥の木とされています。松は平安時代から意匠として使われ、その後絵画や工芸品など様々なデザインに用いられてきました。現代でも格調の高い文様として帯にもよく使われています。 女優・吉田羊さんが「美しいキモノ」2020年秋号でご着用されています。
木を組んで格子形に仕上げた天井のことを格天井と言い、神社仏閣に多く使われています。格子の中に様々な絵柄を収めた文様が格天井文で、礼装のきものや帯に使われる格の高い文様です。この柄では格子が菱形になっていますが、菱形は有職文様の織物に数多く使われていた文様で厄除け魔除けの意味を込めて衣服や宝物に使われていたようです。菱形の中には華文を収めたデザインになっており、華文は特定の花を表すのではなく花のような形をした華麗な文様全般を指します。それぞれ格の高い文様を散りばめたデザインがこの帯の特徴です。 女優・吉田羊さんが「美しいキモノ」2020年秋号でご着用されています。
松と南天の組み合わせと言えばお正月の飾り付けの定番です。 松は常緑樹で色の変わらない普遍性が尊ばれ、千年の樹齢を保つと言われることから長生きの象徴として吉祥の木とされています。松は平安時代から意匠として使われ、その後絵画や工芸品など様々なデザインに用いられてきました。現代でも格調の高い文様として帯にもよく使われています。 南天は漢方の薬草として用いられてきました。「難を転ずる」に通じることから縁起の良い木、幸いを招く木として育てられてきました。赤い実は正月の飾りとして松に限らず松竹梅との組み合わせで用いられることが多いです。吉祥文様としても活用されています。 2013年NHK大河ドラマ「八重の桜」最終回ラストシーンにて、主演女優・綾瀬はるかさんにご着用いただきました。
唐草文様とは蔓草の蔓や葉が絡み合って曲線を描く文様で、花や果実をあしらったものです。実在する草花を意味しているわけではなく、現実の草花から離れて人間が創造した理想の草花となります。歴史が古く、古代エジプトに生まれ日本には中国を経て奈良時代に伝えられました。舶載烈(はくさいぎれ)の正倉院文様や名物裂文様を代表する文様でもあり、古くから日本で愛されています。 姿形から永くつながり絶えず続くものと考えられており、四季にこだわらずに身につけられる吉祥文様として礼装の袋帯にも好んで使われます。 女優・高島礼子さんが2009年東映カレンダーの表紙にてご着用いただきました。
天皇陛下をはじめ、皇族の方々はお名前や称号のほかに「お印」というものを持たれ、その方の持ち物や贈り物などの目印としてお使いになられます。この帯では新天皇陛下の御即位に伴い、皇嗣となられた秋篠宮皇嗣殿下のご家族のお印を全体に模した柄となっています。 秋篠宮お印 ・秋篠宮皇嗣殿下:「栂(ツガ)」 ・秋篠宮皇嗣妃殿下:「檜扇菖蒲(ヒオウギアヤメ)」 ・眞子内親王:「木香茨(モッコウバラ)」 ・佳子内親王:「ゆうな」 ・悠仁親王:「高野槇(コウヤマキ)」 女優・吉永小百合さんが2010年シャープ株式会社のTVブランド「アクオス」のお正月用ポスターにご自身でお選びいただいたうえでご着用いただいきました。
菊は中国から奈良時代から平安時代にかけて渡来し、貴族の花として宮中に浸透しました。平安時代から天皇の衣装に使われるのは鳳凰が住むと木と考えられていた桐の紋章が使われていましたが、鎌倉時代に菊好きであった後鳥羽上皇が使い出したことから今では皇族の紋章とされています。 この帯では匹田で大きな菊の葉を埋め、背後に弧線と直線で簡易的に表現された滝を配することで寛永小袖の特徴とも言える大胆な構図を再現しています。 参照デザイン:白地菊滝文様小袖 美しいキモノ2020年秋号掲載。女優・鈴木保奈美さんにご着用いただきました。 1159-14546
鬘帯(かずらおび)とは能の装束で、幅3センチ、長さ2メートルくらいの装飾的な帯で女役の扮装に用いられます。鉢巻きのように、鬘の上から締めて、後ろで結んで垂らします。若い女性の役には「色入/紅入」という紅色が使われたもの、中年以降の女性の役には「色無/紅無」という紅色が入らないものを用います。植物の模様が表わされることが多く、鬼女の役には三角形を連続させた「鱗模様」などが用いられます。 この図柄は関ヶ原の戦いで大功を挙げ、徳川一の功労者として重臣となった彦根藩・井伊家に所蔵された能狂言衣装の図柄を基としています。 美しいキモノ2019年秋号掲載
正倉院は奈良時代に建立された、東大寺にある大規模な高床式倉庫です。聖武天皇・光明皇后ゆかりの品をはじめとする多数の美術工芸品が貯蔵されており、国宝に指定されている宝庫でもあります。 奈良時代頃の日本の工芸品だけでなく、西アジア(ササン朝ペルシア)や中国からシルクロードを渡って日本にもたらされたものも多く国際色豊かな宝物が1,000年以上もの長きに渡り収蔵されていました。 正倉院に納められている宝物を文様化したものを、正倉院文様と呼び代表的なものには華文、唐花、唐草などの植物文様、鳳凰、鹿、孔雀、鳥などの動物文様などがあります。 この帯のモチーフとなったものは、ペルシア絨毯でもお馴染みな古代ペルシアから奈良へ伝わった宝物から由来しており、いくつもの花を蔓草が縁取るデザインとなっています。ペルシアから伝来した正倉院宝物の柄をモチーフに、藍色も鮮やかに織り上げています。 美しいキモノ2017年冬号の見開き広告に掲載された帯です。
中国から伝承した自然の気の流れを大事にする「風水」の教えは平城京・平安京の造営に始まり江戸の街造りにまで活かされています。この教えに基づき十の吉祥をひとつとして織り成した綴れ帯です。 十寿円満図 ①〜③一富士二鷹三なすび ④四神相応 ⑤五鯉躍(ごりやく=御利益) ⑥六瓢箪(むびょう=無病) ⑦七福神 ⑧八方睨みの龍 ⑨九頭馬 ⑩十徳地蔵
欄(らん)は松、竹、梅と構成して四友(しゆう)。竹、梅、菊とで四君子(しくんし)。梅、菊、蓮とで四愛(しあい)と呼ばれ、豊年の兆しとなるめでたい花である瑞花として文様に用いられてきました。近年はカトレアなどの洋蘭も多くなり、多彩に染めることができるようになりました。 この袋帯は蝋箔(ろうばく)と呼ばれる特殊な箔を地に使っており、箔の輝き・光沢感と、しなやかな結びやすさを両立させています。 美しいキモノ2017年秋号の見開き広告に掲載された帯です。
鷹は姿に威厳があり、鷹狩りは古来から天皇やその子孫に好まれ支配者の権威の象徴でした。中世には武家にも広がりはじめ、戦国武将たちによって盛んに行われました。鷹の意匠には武家の精神に通じる力強さがあります。吉夢とされる「一富士二鷹三なすび」の文様が江戸小紋に見られますが、形の勇ましさからか、鷹の羽が意匠化されています。 実はどちらもタカ科タカ目の同じ鳥なのですが、大きな鷹のことを鷲(わし)と呼びます。 参照デザイン:紺繻子地鷲波松模様
1888年10月、皇居内に落成した明治宮殿は、京都御所を模した和風の外観に椅子やシャンデリアのある洋風の内装という和洋折衷の木造建築でした。落成の翌年、この宮殿で大日本帝国憲法発布式が行われました。 戦時中の空襲により全焼しましたが、1968年に再建され2019年天皇陛下御即位記念切手には明治宮殿正殿の天井絵と正面玉座上部の緞帳の絵柄がレイアウトされています。 参照デザイン:明治宮殿正殿 天井絵柄 美しいキモノ2019年秋号掲載
大きな地紙に色とりどりの藤の花、桐の花を散りばめたデザインです。 末広とも呼ばれる扇の骨部分を除いた紙の部分を地紙といいます。この紙に絵や文字をかいて扇に仕立てます。文様構成にリズムをつけ華やかさを添えるので、現代のきものでもよく用いられています。 藤はその美しさで古くから愛され、平安時代の藤原氏全盛の時に文様として完成されて有職文様にも多く見られます。また桐は中国で鳳凰の住む木として尊ばれ、日本でも菊とともに皇室の紋とされてきました。現代でも代表的な吉祥文様として祝儀のきものや袋帯に用いられることが多い文様です。 美しいキモノ2019年秋号掲載
皇居には多くの部屋があり、その中でも「松」「竹」「梅」の名を持つ各部屋にはそれぞれ松竹梅に関係する装飾品が飾られています。中でも松の間は宮殿内で最も格調高い部屋とされており、内閣総理大臣と最高裁判所長官の新任式など重要な行事が行われます。部屋の屏風に描かれているのが大王松で、松の王の名の通り高さは40mをも越えます。その勢いと、一年中緑を絶やさないところから長寿や大成の象徴とされています。 美しいキモノ2019年冬号掲載
皇居には多くの部屋があり、その中でも「松」「竹」「梅」の名を持つ各部屋にはそれぞれ松竹梅に関係する装飾品が飾られています。中でも松の間は宮殿内で最も格調高い部屋とされており、内閣総理大臣と最高裁判所長官の新任式など重要な行事が行われます。部屋の屏風に描かれているのが大王松で、松の王の名の通り高さは40mをも越えます。その勢いと、一年中緑を絶やさないところから長寿や大成の象徴とされています。 美しいキモノ2018年春号掲載
秋草は桔梗、萩、女郎花、撫子、薄(すすき)、葛、藤袴の秋の七草や竜胆のほか、秋の野原に咲く草花を文様化したものです。これらのうち数種を用いても秋草文と呼びます。秋草は華やかなものではなく、静寂の趣があり日本の美意識を感じさせる文様です。 楚々とした秋草に流水を描き添えたり、薄には露の玉を加えるなど自然を取り入れた情趣深い文様もございます。能装束によく登場する文様です。 扇子は末広とも呼ばれ、末が広がることから吉兆の意味になぞらえて縁起の良い文様とされています。扇面に草花などの文様が入れられることが多く、この図柄でも秋草との組み合わせとなっております。 この図柄は関ヶ原の戦いで大功を挙げ、徳川一の功労者として重臣となった彦根藩・井伊家に所蔵された能狂言衣装の図柄を基としています。 美しいキモノ2018年秋号掲載。女優の比嘉愛未さんにご着用いただきました。
江戸時代の画家・伊藤若冲(1716年-1800年)はすぐれて精密かつ独創的な画風が讃えられ、近年絶大な人気を博しています。この動植綵絵(どうしょくさいえ)は、彼が信心した京都・相国寺へ寄進する為に十年以上かけて描いた渾身の代表作と言えます。鶏に代表される鳥たちを筆頭にさまざまな動植物、さらには魚や貝までもが描かれた全三十幅からなる花鳥画の大作です。その動植綵絵を二反の帯とし、その細密な筆使いを再現すべく、全通総柄の帯にしています。 参照デザイン:動植綵絵
江戸時代の画家・伊藤若冲(1716年-1800年)はすぐれて精密かつ独創的な画風が讃えられ、近年絶大な人気を博しています。この動植綵絵(どうしょくさいえ)は、彼が信心した京都・相国寺へ寄進する為に十年以上かけて描いた渾身の代表作と言えます。鶏に代表される鳥たちを筆頭にさまざまな動植物、さらには魚や貝までもが描かれた全三十幅からなる花鳥画の大作です。その動植綵絵を二反の帯とし、その細密な筆使いを再現すべく、全通総柄の帯にしています。 参照デザイン:動植綵絵
「動植綵絵」「鳥獣花木図屏風」「仙人掌群鶏図障壁画」など、数多くの名作を描いた江戸時代の画家・伊藤若冲(1716年-1800年)は絢爛豪華な花鳥画を始めとした派手な筆使いの印象を強く持たれていますが、自由で遊び心に溢れた水墨画も数多く残しています。水墨画にも様々な動物を登場させ、若冲の想像力と技術力を結集させた水墨画となっています。相国寺にある水墨作品を二反の帯とし、その細密な筆使いを再現すべく、全通総柄の帯にしています。 参照デザイン:若冲水墨図
「動植綵絵」「鳥獣花木図屏風」「仙人掌群鶏図障壁画」など、数多くの名作を描いた江戸時代の画家・伊藤若冲(1716年-1800年)は絢爛豪華な花鳥画を始めとした派手な筆使いの印象を強く持たれていますが、自由で遊び心に溢れた水墨画も数多く残しています。水墨画にも様々な動物を登場させ、若冲の想像力と技術力を結集させた水墨画となっています。相国寺にある水墨作品を二反の帯とし、その細密な筆使いを再現すべく、全通総柄の帯にしています。 参照デザイン:若冲水墨図
ダイナミックな龍をしなやかで緻密な風合いで織り成した西陣織の逸品。 龍は古来中国の想像上の動物として、吉祥文様に広く用いられてきました。 龍は水中に居住し、天に登り、よく雲を起こし、雨を呼ぶと言います。日本での代表的な図には富士越え龍があり、天下第一の富士山をも飛び越える勢いを表しており、飛躍、発展の意味を持ちます。またこの意匠でもある雲中にいる龍は雲龍と呼ばれ、世界遺産・下鴨神社の干支大絵馬を毎年手掛けることでも知られる塩谷榮一画伯の墨彩雲龍を西陣織の技で織り上げています。 参照デザイン:墨彩雲龍
意匠は滝を登る鯉です。 しばしば難関突破などの意味で用いられる「登龍門」という言葉は、古代中国で黄河龍門の滝を登り得た鯉は龍になると言われていたことに起因します。 また歌舞伎宗家市川團十郎家のお家芸である歌舞伎十八番の一つである演目「助六」に登場する吉原一の花魁・揚巻が纏う豪華絢爛な衣装の中でも端午の節句の象徴としてこのデザインが使われていることが有名です。 参照デザイン:黒地登龍門文様
国内の龍をモチーフとした図では三爪を持つ龍(三爪龍)がほとんどですが、龍を誕生させた中国の文様に描かれる五爪龍は龍の中でも最も高貴なものとされてきました。当時の中国皇帝の衣服にもこの五爪龍が図案化されていたそうです。 五爪龍は皇帝そのものを意味し、最高の権威と人々に考えられていました。
歌舞伎誕生400周年を記念して、江戸時代の歌舞伎衣装(打掛)をモチーフとした袋帯です。 文様となっている海老はおせち料理の伊勢海老で知られるように古来からお祝いの席に欠かせないものでした。「海」の「老」人という字があてられているように、腰が曲がっても元気な老人の姿に例えられ不老長寿の象徴とされています。海老は吉祥文様として、時には人気歌舞伎役者のトレードマークとして親しまれてきました。 参照デザイン:黒地海老注連縄若松文様
簾を意味すると御簾の文様と梶の葉の文様を合わせたデザインです。 平安時代の寝殿造では母屋と庇の間に美しく飾った御簾がかけられました。これを文様としたものは江戸時代の衣装に多く、紅地に御簾や几帳、檜扇などをあしらった豪華な打掛もあります。王朝風の雅な文様として現代でも用いられています。 また梶の葉ですが、梶の葉は大きく、古くはこの葉に文字を描いたと言われます。平安時代、七夕には葉に歌詞を書いて祭ったことから、後に流水(天の川)と組み合わせて七夕を表す文様となったそうです。江戸期の小袖の図柄にその例が見られます。この図柄は関ヶ原の戦いで大功を挙げ、徳川一の功労者として重臣となった彦根藩・井伊家に所蔵された能狂言衣装の図柄を基としています。 婦人画報2020年5月号掲載。女優の木村多江さんにご着用いただきました。 美しいキモノ2018年春号掲載
1993年に行われた天皇皇后両陛下のロイヤルウェディングの際に、皇后雅子さまがお召になられた正装「ローブデコルテ」に使用された「龍炎文」をモチーフにしております。龍は中国で皇帝のシンボルとされ、皇帝以外の者による使用は厳しく禁じられていたそうです。水と火が燃え立つさまに龍の形を重ね合わせ、途切れのない連続模様としたデザインがこのローブデコルテに使用されました。 またこの帯は金華山織(別名「わな織」)と呼ばれる技法で織っております。織り込んだ針金を一本一本引き抜いたあとに残る輪の立体感が特徴で、山々が重なり合う様に似ていることから金華山と呼ばれています。金華の山々の重なりに、無限に連続する龍を乗せて福運を運んでまいります。 美しいキモノ2018年秋号で女優の木村多江さんがご着用されています。
松は常緑樹で色が変わらないことや、千年の樹齢を保つことなどから長寿の象徴として吉祥文様とされています。また、めでたい木として、正月の門松にも使われており、平安時代より様々に意匠化されて格調の高い文様です。 参照デザイン:白綸子地垣に老松縫箔小袖 美しいキモノ2019年冬号掲載
この大胆な意匠構成は江戸時代寛文年間頃に流行した「寛文小袖」の特徴であり、その代表作とされています。 一見すると菊にしか見えない文様ですが、実は中心に菊花を置き、その周囲を棕櫚(しゅろ)の葉で囲んだ、菊と棕櫚の合成文様です。棕櫚とは東北地方から九州地方まで広く栽培されるヤシ科の常緑樹です。寛文7年に刊行された小袖雛形本『御ひいなかた』に、この帷子と近似する意匠が「きくにしゆろ」という注記とともに掲載されていることから明らかにされています。この元となった小袖は重要文化財として京都国立博物館に所蔵されています。 参照デザイン:濃茶麻地菊棕櫚文様帷子 美しいキモノ2017年秋号掲載
秋草は桔梗、萩、女郎花、撫子、薄(すすき)、葛、藤袴の秋の七草や竜胆のほか、秋の野原に咲く草花を文様化したものです。これらのうち数種を用いても秋草文と呼びます。秋草は華やかなものではなく、静寂の趣があり日本の美意識を感じさせる文様です。 楚々とした秋草に流水を描き添えたり、薄には露の玉を加えるなど自然を取り入れた情趣深い文様もございます。能装束によく登場する文様です。 扇子は末広とも呼ばれ、末が広がることから吉兆の意味になぞらえて縁起の良い文様とされています。扇面に草花などの文様が入れられることが多く、この図柄でも秋草との組み合わせとなっております。 この図柄は関ヶ原の戦いで大功を挙げ、徳川一の功労者として重臣となった彦根藩・井伊家に所蔵された能狂言衣装の図柄を基としています。 美しいキモノ2018年秋号掲載
天皇陛下をはじめ、皇族の方々はお名前や称号のほかに「お印」というものを持たれ、その方の持ち物や贈り物などの目印としてお使いになられます。 上皇陛下のご交代に際し、新天皇陛下、皇嗣殿下のご両家を加えたその象徴たる「お印」を散りばめた大変格調高いデザインとなっています。 「お印」ご参考 天皇陛下:梓(アズサ) 皇后陛下:浜梨(ハマナシ) 愛子内親王:五葉躑躅(ゴヨウツツジ) 秋篠宮皇嗣殿下:栂(ツガ) 秋篠宮皇嗣妃殿下:檜扇菖蒲(ヒオウギアヤメ) 眞子内親王:木香茨(モッコウバラ) 佳子内親王:ゆうな 悠仁親王:高野槇(コウヤマキ) 上皇陛下:榮(エイ=桐) 上皇后陛下:白樺(シラカバ) 美しいキモノ2019年春号掲載
もとは宝物を集めた中国の文様ですが、日本風にアレンジされて現代に至ります。 構成要素は思いのままになる如意宝珠、体が隠れる隠れ蓑・隠れ笠、打てば宝が出る打ち出の小槌、大切なものを守る土蔵の鍵、砂金や金貨を入れる金嚢、祇園社の祇園守、金を測る分銅、仏宝の丁子、花輪違い(七宝)、知恵を表す封建、怨敵退散の意味がある法螺などが使われます。時代によって多少変化し、すべてが揃わなくても宝尽くしと呼びます。福徳をよぶ代表的な吉祥文様です。 美しいキモノ2020年冬号掲載
もとは宝物を集めた中国の文様ですが、日本風にアレンジされて現代に至ります。 構成要素は思いのままになる如意宝珠、体が隠れる隠れ蓑・隠れ笠、打てば宝が出る打ち出の小槌、大切なものを守る土蔵の鍵、砂金や金貨を入れる金嚢、祇園社の祇園守、金を測る分銅、仏宝の丁子、花輪違い(七宝)、知恵を表す封建、怨敵退散の意味がある法螺などが使われます。時代によって多少変化し、すべてが揃わなくても宝尽くしと呼びます。福徳をよぶ代表的な吉祥文様です。
水面に散った花が、ひとかたまりになって流れるさまを筏に見立てた風雅な文様です。筏に花の折枝を添えた文様のことも言い、これにさらに筏という字をあしらったものは伊達筏と称して江戸時代に好まれました。 古典文様として現代にも多く用いられます。
和歌や俳句、絵などを書く細長い料紙を文様化したものです。短冊は鳥の子紙や画仙紙などを厚紙に貼り合わせたもので、古くからあります。文様としては、短冊の中に文字や小柄をいれたものがあります。 また樹や竹に短冊をさげた文様もあります。
七宝とは有職文様の代表的なひとつで、同じ円を円周の四分の一ずつ重ねていく文様です。元来は仏教で貴重な七つの宝(金、銀、瑠璃、玻璃、珊瑚、瑪瑙、真珠)を意味しましたが、和の連なりを人と人とのご縁が広がる様に例え「人のご縁は七つの宝よりも尊い」という意味合いを込めたこの文様の名前としての方が今では一般的となっています。 その七宝に菊の花を添えたのがこの帯のデザインです。菊は中国で薬の力を持つ花として仙花と呼ばれており、日本には奈良時代から平安時代にかけて渡来したそうです。姿、色、香りが優れていて多くの絵画や工芸品の題材に使われ続けています。秋の花ではありますが、古典的な吉祥文様として広く好まれ、きものの柄にも季節問わず多用される文様です。 美しいキモノ2018年秋号で女優の比嘉愛未さんがご着用されています。